KOF’2001 龍虎の拳チームストーリー




裂帛の気合が道場の中に響きわたっている。リョウ・サカザキとその妹ユリの朝稽古である。
リョウの拳が大気を震わせ、ユリの上段蹴りが唸りをあげる。
やがて激しい組み手が終わり、二人は距離をとり、一礼した。

「腕をあげたな、ユリ。」

「当たり前よ!何回K.O.F.に出てると思ってんの?」

「そうだったな。さあ、飯にしないか?」

「そうね。あら?ロバートさん?」


こんな時間に道場に顔を出したことのないロバート・ガルシアが、ふらりと現れた。

「どうしたロバート?顔色が良くないぞ。」

「ヤバイんや。めっちゃマジでヤバイんや。」


ロバートはつぶやくなり、その場にへたりこんでしまった。

「ユリ、水だ!水を持ってこい!ロバート、しっかりしろ!
どうした?何があったんだ?」


リョウは、何事かブツブツとつぶやくロバートの口元に耳を寄せた。

「リョウ!朝っぱらから何を騒いどる!ん?ロバートか?どうした?」


道場に出てきたタクマが、リョウと同じ様にロバートの傍らにしゃがみこんだ。

「買収・・・」


消え入りそうな声で、ロバートは答えた。



道場内には深刻な空気が漂っていた。
ロバートを奥の部屋に一旦寝かしつけた三人は、頭を寄せてヒソヒソと話し始めた。

「ロバート、相当まいってたみたいだな。」

「何だか、公開株の買い占めがどうとか、開発利権がどうとか、
よくわからない事を言ってたわね。」

「いずれにせよ!」

「しーッ!お父さん、声が大きい!ロバートさん起きてきちゃうじゃない!」


ユリにたしなめられたタクマは、声のトーンをやや落とした。

「いずれにせよ、ロバートの危機は、わしらの危機。
つまり極限流の危機というわけだ。」

「?」


世故に疎いリョウは、タクマの論理の飛躍についていけないでいた。タクマは構わず続ける。

「そして、この危機を乗り切るには金がいる、という事だ。」

「でも、お父さん、そんなお金、うちには無いわよ。」

「そこで、これだ!」


タクマはにやり、と笑うとおもむろに懐から4つの封筒を取り出した。

「?」

「わしらは、今年のK.O.F.に出場して、優勝するのだ!」

「K.O.F.?どういうことなんだ親父?」

「忘れたか、リョウ。
K.O.F.の優勝チームには莫大な賞金が贈られることを!
しかも、今年のK.O.F.は世界大会だと聞いた。
賞金の額も、今までとはケタが違うだろうて!」

「そうか!わかったぞ親父!
つまり、優勝すれば、ロバートもこの道場も助かる、というわけだな!」

「その通り!」

「でも、ロバートさんがあの調子じゃあ、優勝はちょっと・・・
あ?ロバートさん!」


そこには興奮しているのか、頬を紅潮させたロバートがすっくり立っているではないか!
ユリの声には答えず、ロバートはタクマの前に座り込むと、無言でタクマの手をギュッと握った。

「やっぱり、頼れるものは師匠や!行きましょ、みんなで!K.O.F.に!」

「おお、ロバート!よくぞ言った!そうと決まれば善は急げ、だ。
各自、早速支度をすませるのだ!」

「押忍!」


タクマも、リョウも、ロバートも、その意気天を衝かんばかりである。
しかし、ユリはふと思った。
今回も会場までの移動費やら宿泊費やらは、やっぱりロバートもちなのだろうか、と。


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