KOF’2001 韓国チームストーリー




「いやっ!はっ!」

ここは、テコンドーの精神と自らの正義の心を広める為、キムが開いた道場である。
そこで門下生達が修行にはげんでいる。

「あのメガネを頭にのせた子はセンスがいいですね。ジョンさん」

「センスとは相変わらずキム君は非論理的です。しかし確かに型はいいですね。
あとは実戦を積めば、一流の使い手になる事でしょう」

その道場の端で、一人の巨漢と、それとは対照的に小柄な男が一人、腕立て伏せをしていた。
二人の男の体からは汗がびっしょりと噴きだし、床に滴り落ちている。

「でもよかったでヤンスよ、元に戻れて。
アッシがチャンのダンナの体のまんまだったらと思うと、背筋が寒くなるでヤンス」

小柄な男が苦しそうに大男に話しかける。

「そりゃおめえ、こっちも同じだぜ、チョイ。
ハァハァ、お前の体じゃ小さすぎて鉄球も回せやしねえ」

チャンがそれに答える。こちらもかなり苦しそうである。

「でも、キムのダンナやジョンのダンナの言った通りに、
頭と頭をぶつけたら元に戻った、なんてまるで漫画みたいでヤンスねえ」

「全くだぜ」

「はい。そこまで!」

キムが二人のそばによって来た。

「はい!今日はこれまで!」

「フウッ・・・やっと終わりでヤンスか、キムのダンナ・・・
あら?ジョンのダンナは?」

「ああ、彼なら麻宮アテナさんのコンサートに行くとかで今日は早く切り上げたぞ」

「なんでえ、俺らには修行させておいて、自分は遊びにいくのかよ」

「まあまあ、誰にでも休息は必要だからな」

「それじゃ、アッシ達も!?」

「ハハハ、面白い冗談だ。更正に休息は無い!さあ、もうあと1セット!!」

「ヒエーーーーーーーー」


ジョンは大きな道路の前で、信号待ちをしていた。
今日は待ちに待った麻宮アテナのコンサートだ。
会場までは、この横断歩道を渡れば5分もかからないはずだった。
ちらり、と信号を見る。まだ赤だった。
時間というものは、待つ間はひどく長く感じるものだ。
ジョンは向こう側の歩道に目をやった。

「あ、アテナさん!?」

何と、横断歩道の向こう側に麻宮アテナが天使の様に微笑んで、自分に手招きしているではないか!

ジョンはまた信号を見た。青に変わった。
ジョンは、弾かれた様に走り始めた。アテナは相変わらず微笑み続けている。

「アテナさーーーーんッ!」

ところが、ジョンが走っても走っても、アテナには一向に近付かない。
それどころか、アテナの姿が徐々に遠ざかっていく。ジョンは焦った。必死だった。

「そんな、馬鹿な!アテナさん!アテナさーーーん!!」

目が覚めた。まず白い天井が見え、次に見慣れた顔が見えた。

「大丈夫ですか、ジョンさん。ここは病院ですよ」

「キム君・・・!?確か私はアテナさんのライブに行く途中・・・」

ジョンの記憶がよみがえった。

コンサート会場に行く途中、横断歩道を渡るために信号を待っていた時、
壁一面にびっしりと麻宮アテナの特大ポスターを貼り出した所に通りかかったのだ。
しかし、そのポスターのほとんどがファンによってはがされ、
壁に残っているのは後わずか数枚になっていた。

ジョンはイライラしながら信号が変わるのを待っていたのだが、
やがて待ちきれなくなり、赤信号にもかかわらず横断歩道に飛び出したのだ。
そして車にはねられたとジョンは思っていたのだが、事実は少し違う。
実際は、その車は対面の赤信号を見て停車寸前だったため、
猛スピードで駆け出したジョンが勝手に車に激突したのだった。
ただ、その衝撃ではね飛んだジョンは背中を強く打ったため、
首、腰等に浅からぬダメージを受けた、という訳だ。

「ああ、キム君。心配をかけて申し訳ない。
しかし、この程度の怪我・・・いたた・・・」

「無理はしないほうがいいでヤンスよ・・・」

「そうだぜ、ジョンのだんな」

「う〜ん、残念ですが今回のK.O.F.は・・・」

「え!?キング・オブ・ファイターズ?」

「ええ・・・今年もジョンさんと出場しようと思っていたのですが、
今回、ジョンさんは無理ですね。」

「し、しかしキム君。私の代理がいるというのですか?」

「ええ、ジョンさんと私が今朝、話していたあの子ですよ。
今、ここにお見舞いにきてます。
メイ、入ってきなさい」

するとそこには、今朝みたメガネを頭にのせて、Tシャツを着た女性が部屋に入ってきた。

「はじめましてジョンさん!私メイ・リーと言います。
お体大丈夫ですか?私ジョンさんの分まで頑張って悪を倒してきます!」

「へえ、メイ・リーちゃんでヤンスか。
なんか男ばっかりでむさ苦しかったでヤンスけど、
なんかそれを吹き飛ばすくらいの元気のいい娘でヤンスねえ〜」

「まったくだな。悪を倒すってのがちょっと気にかかるけどよ」

「何を言ってるんだ、チャン!それこそ我々の目的ではないか!
彼女は正義の使者になるのが夢なんだぞ!」

「え?ま、まじでヤンスか?」

「はい!私、正義の味方になりたいんです!
だから、正義の使者、キム師匠の道場に通って私も立派な正義の使者になります!」

「は、はは・・・ま、がんばろうぜ!」

「それではジョンさんお体に気をつけて、今回は十分、休養をとって下さいね。では」

「ちょっ、ちょっとキム君!みんな!まってください!!」

バタンとドアが閉まり、笑い声が廊下から聞こえてくる中、
ジョンは病室でただ一人、呆然としているのであった。


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