KOF’96 女性格闘家チームストーリー
イギリスのキングのバー《イリュージョン》に不知火舞がすごい勢いで飛び込んで来た。舞「キ、キングさん!大変です!!」
店じまいの準備をしていたキングはその迫力にあっけにとられながらも、言葉を返した。
キング「い、いきなり何だい、舞!」
舞「そ、それが…今回のキング・オブ・ファイターズの事なんですけど!
ユリちゃんが一緒に組めなくなってしまって!」
キング「えっ!?ユリが?」
舞「そうなんですよ!ユリちゃんったらお父さんの策略にはまっちゃったみたいで、
だから私達ユリちゃんの代わりを探さないと、大会に出場できないんです」
キング「そう…丁度よかったかもね…」
舞「え…?」
キング「今回の大会、私は出場を見合わせたいんだ」
舞「えっ!?なんですって?」舞は自分の耳を疑った。
キング「…つい先日、弟が交通事故にあってね」
舞「弟さんが!?」
キング「ああ、大した事はないんだけれど、身内は私一人。
あの子のそばにいてあげたいんだ。…だから今回の大会すまないけれど…」
舞「え、ええ、分かります。弟さんが一日も早く回復するように祈ってます。
キングさんも大変だろうけど頑張って下さいね」
キング「舞、悪いね。力になれなくって。あっ、そう言えば舞の彼氏の……
確かアンディだったっけ。彼はどうなんだい?」
舞「……アンディはいつもの3バカトリオで出場なんです…」
キング「あっ…そう、そうなのか…。ど、どうだい今晩はここに泊まっていくかい?」
舞「いえ。近くにホテル取ってるんで、気を使わないで下さい。じゃあ…!」そういうと舞は店を飛び出した。
キング「あっ、舞!」
舞は淋しそうに、街を歩いていた。
舞「また、一人ぼっちになっちゃったなぁ…」
なんだか自分がみじめで、ふいに目頭が熱くなる。
気がつくと、涙の雫がポタポタと落ちていた。
舞が出て行った後、イリュージョンで一人佇んでいるキング。キング「キング・オブ・ファイターズか…」
店のTVで放送している派手な大会の宣伝をキングは見つめていた。
翌日、舞は宿泊していたホテルから日本へ帰る為の準備をしていた。舞「ハア〜、他にも色々あたってみたけど…みんなダメだったし、今回は私出場出来ないなぁ…」
そう言うと、舞は大きな溜め息をついた。
「ピンポーン」
ふと、玄関の呼び鈴が鳴った。
舞「はーい。ボーイさんかしら? 今出ま〜す!」
しかし、玄関を開けた瞬間、「ブオッ」と鋭い拳が舞の顔面めがけて飛んで来た。
舞は、間一髪でそれをよけた。舞「な、何なのよ!」
舞は一瞬何が起こったか分からなかったが、どうやら相手は女であり技は古武術の様であった。
女は後退りする舞を押し、じりじりと廊下に上がってきた。舞「トウッ!」
気合と共に舞はキックを繰り出した。その攻撃を女はするりと抜けた。
舞「まだまだっ!」
舞はそこに、間髪を入れずに技を重ねた。
舞「龍炎舞!」
炎が袴姿の女に襲いかかる。
この攻撃には虚を突かれたのか、袴姿の女はかろうして防御したが、たじろいだ。「今だわ!」
舞「トオーッ!」袴姿の女へ向けて舞が突進して行く。必殺忍蜂である。
「ガシィッ」
女は突進して来る舞をガードした。そして、舞を掴みかかりに来た。その瞬間、「はい、そこまで!」
二人はその声をした方を見た。玄関に一人の女性が立っていた。
舞「キ、キングさん!」
キングの姿を見ると、袴姿の女は舞を掴んでいた手を離し、言葉を発した。
女「手荒な真似をしてすみません。私、藤堂香澄といいます。
キングさんに紹介していただいて舞さんに会いにきたんです」
舞「え?キングさんが!?」
キング「ああ、私が誘ったんだよ。チームメンバーにね」
香澄「はい、私、キング・オブ・ファイターズに出場したかったんです。
でも、私、それだけじゃなくて、出場するなら勝ちたいんです。今の手合わせで、
舞さんがとても強いと感じました。これなら優勝も夢じゃないって思いました」
舞「は、はあ…それで、キングさんはどうしてここに?」
キング「う、うん。弟にすべて見透かされちゃってね。
今の魂の抜けた姉さんなんか見たくないって。
戦っている生き生きした姉さんの姿が見たいって。
あの子は戦っている私が誇りだって言うんだ。出場して勝ち抜いて、
そして優勝してほしいってね。…今、弟の為に私がしなければいけない事は、
ベッドの横に付き添ってる事よりもキング・オブ・ファイターズに出場し、
そして優勝することだと気が付いたんだ」
舞「そ、それじゃあキングさん…」
キング「ああ…!当然出場するよ!」
舞「やっ、やったあ!キングさんが一緒に戦ってくれるなら、もう言う事なしだわ!」
キング「それじゃ話は決まったわね!舞!香澄!出場するからには優勝を狙うわよ!」
香澄「勿論です」
舞「当然よね!キングさんの弟さんの為にも!」