KOF’97 怒チームストーリー




 某国内戦地。作戦行動中のラルフ、クラーク、レオナ。

 ラルフ「目的地までは?」
 クラーク「あと30秒ってとこです」
 ラルフ「レオナは? ちゃんと合流できるんだろうな?」
 クラーク「恐らくは。ま、いらん心配でしょうね」
 ラルフ「まあな」

 一足先に合流地点にたどり着いているレオナ。辺りを見回す。

 レオナ「・・・!」

 潰れた家屋の傍らに倒れている少年。

 レオナ「まだこんな所に・・・」

 駆け寄り、少年を抱き起こす。

 レオナ「しっかり・・・」

 息も絶え絶えに目を開く少年。が、レオナを見るや驚きの表情になる。

 少年「い、嫌だ・・・!お願い・・・、殺さないで・・・!」
 レオナ「!!!」

 不意に意識が白濁してくるレオナ。反響する少年の声。

 『お願い・・・殺さないで・・・!! コ・ロ・サ・ナ・イ・デ!!!』
 明らかに変質していく声の主。困惑するレオナ。

 レオナ「コロス・・・?誰が・・・誰を殺すの・・・?」

 白濁していた意識がはっきりしてくる。
 が、今までとは明らかに違う光景が浮き上がる。それと共に輪郭を現す声の主。
 『 こ・・・・・・ろさ・・・ない・・・・・・で・・・・・・・・・レオナ!!!』
 血まみれでうずくまる女性の姿がレオナの網膜に飛び込んでくる。

 レオナ「・・・! マ、ママ・・・!? どうして・・・!」

 足下にしがみつくレオナの父親。何かを言おうと口を開こうとしている。

 レオナ「違う・・・!こんなの・・・!!」

 不意に後ろから肩を握りしめられる感触。振り向くとゲーニッツが立っている。

 ゲーニッツ「さあ・・・、ママと同じ様にパパにもとどめを刺しておあげなさい・・・」
 レオナ「違う・・・、私じゃない・・・」
 ゲーニッツ「違う。あなただ。あなたが殺したのだ」
 レオナ「チ・ガ・ウ!!!」

 生暖かい血の感触が手から伝わってくる。

 ゲーニッツ「違わない!しっかりとご覧なさい。自分の手を!!」

 両手を見るレオナ。血まみれの両手。その先に、事切れた父親の姿が見える。

 レオナ「あ・・・、ああ・・・」

 合流地点にたどり着くラルフとクラーク。立ち尽くすレオナが視界に入ってくる。

 ラルフ「・・・? 何をボサッとしてやがる?」
 クラーク「大佐、まずい!!」

 後方から今にも二人を追い抜こうとしている砲弾の音。

 ラルフ「やべえ!逃げろ、レオナ!」

 立ち尽くしたままのレオナ。足を早めるラルフとクラーク。

 ラルフ「逃げるんだ、レオナ!レオナぁぁぁっ!!」

 不意に我に返るレオナ。視界にもとの戦場が飛び込んでくる。近づいてくる砲弾の音。

 レオナ「・・・私は・・・・・・!」
 ラルフ「レオナぁぁぁぁぁっ!!!」

 自分に飛び込んでくるラルフの姿が見える。再び白濁する意識。響く爆発音。

 ハイデルンの執務室。外の景色を眺めているハイデルン。
 発言許可を待つラルフ。手に包帯を巻いている。

 ラルフ「今回の作戦失敗に伴う処分に関してお教えいただきたいのですが・・・」

 後ろに控えるラルフのほうを振り返る。

 ハイデルン「作戦失敗? 確かにアクシデントはあった。
         しかし、作戦の目的自体は遂行されたはずだが・・・?」
 ラルフ「いえ、それは結果論であって、実質的には生存者をみすみす死なせてしまう
      というミスを犯しました。これはプロにあるまじき行為です」
 ハイデルン「厳しいのだな。だが、おまえ達の言う生存者の遺体は未だ確認されていない。
         我々の調査を持ってしてもだ。それに生存者をあの時に確認したのはレオナ
         ただ一人。そのレオナにしても・・・。いいだろう。それで、おまえは何を望む?」
 ラルフ「しばらくの間、実働部隊から外していただけないかと・・・」
 ハイデルン「謹慎するという事か?」
 ラルフ「その様にとっていただいて構いません」
 ハイデルン「・・・いいだろう。だが、一つ条件がある。
        謹慎はおまえ一人ではなく、チーム全体という事にしろ。
        そうするのならば許可しよう」
 ラルフ「連帯責任ですか?」
 ハイデルン「そういう事だ。謹慎期間のほうは追っ手連絡する。さがれ」
 ラルフ「ハッ!ありがとうございます」

 退出するラルフ。静かに腰掛けるハイデルン。

 ハイデルン「上官に黙って生意気な事を・・・おまえごときの考えが私にわからないとでも
         思っているのか?」

 引き出しから封筒を取り出すハイデルン。

 ハイデルン「キング・オブ・ファイターズか・・・」

 ブリーフィングルームに向かうラルフ。曲り角からクラークが出てくる。

 クラーク「どうでした?」

 包帯をほどき始めているラルフ。

 ラルフ「うまくいった」
 クラーク「そうですか・・・。けど、本気ですか?
       謹慎中にキング・オブ・ファイターズに出場して一体どうするんです?」
 ラルフ「リハビリさ」
 クラーク「リハビリ? レオナの? 大佐、そこまであいつの事を・・・」
 ラルフ「勘違いするな、これからもあの調子でやられたんじゃ、こっちのほうが命を落としかねん。
      そういうのだけは御免こうむりたいって事。それだけだ」
 クラーク「それだけ・・・ですか」
 ラルフ「何だよ?」

 口元に笑みを浮かべるクラーク。

 クラーク「いえ、別に・・・」

 ブリーフィングルーム。二人を待つレオナ。程なく二人が入ってくる。

 ラルフ「処分が決定した。チーム全体での謹慎処分だ」
 レオナ「そう・・・」
 ラルフ「だが、その間ヒマにするつもりはないぞ。謹慎中にする事はもう決まってある」
 レオナ「何をするの?」
 クラーク「キング・オブ・ファイターズに出場するんだそうだ」
 レオナ「・・・?」
 ラルフ「体を鈍らせるわけにもいかないからな。クラーク、資料を見せてやれ」

 クラークが資料をレオナに手渡す。

 ラルフ「出場者はあらかた決まってるらしい。
      そこには載っていないが、俺達もちゃんと招待は受けている」
 レオナ「この子は・・・?」
 クラーク「ああ、新顔だな。若いのによくやるもんだ。気になるか?」

 出場者の少年と戦場で出会った少年の姿が重なる。

 レオナ「・・・・・・別に・・・」
 ラルフ「大会まではほとんど日がない。すぐにも出発する。いいな?」
 クラーク「了解」

 どこか遠くを見つめている様子のレオナ。覗き込むラルフ。

 ラルフ「レオナ、いいな?」
 レオナ「了解」

 何もなかったかのように答えるレオナ。
 クラークのほうに目をやり、両肩をすくめるラルフ。
 再び遠くを眺めるレオナ。

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