KOF’MAXIMUM IMPACTストーリー
―炎の貴公子―
草薙 京
「どこに居ても、俺を探し出せるという事かよ。」
男の口から零れた言葉はあまりに意味深だった。
それは、その男が“草薙京”だということにより、更に言葉の重さを増幅させていた。
「何か、新しい事が起こるのか・・・」
右手に握りしめているのは、あの大会への招待状。
「結果は自分で確かめるしかないな。」
自分自身に突きつけた試練。
静かに閉じられた目が開いた。
その目は既にファイターの目になっていた。
歩き出した京の背中はどこか楽しい事を期待する子供のように見えた。
「これは宿命だ・・・・・・」
その言葉と共に、世界(ライブハウス)は漆黒の闇へと変わった。
次の瞬間眩い光に満たされた世界(ライブハウス)に八神庵の姿は無かった・・・。
神の姿が消えた世界(ライブハウス)は退屈な現実へと切替わっていた・・。
『やあ、レネ。』 テリーは微笑む。
「これ・・・届いてた」 オズオズと封書を差し出すレネ。
『ありがとう。』
テリーが封書を受け取ると、娘は二ッコリと微笑み走り去った。
部屋に戻ったテリーはスプリングの悪いベッドに腰を下ろし封書を開いた。
「今度の開催場所はサウスタウンか。」
そう呟くと、そのままベッドへ体を沈め、天井を見つめる。
<あの街もだいぶ様変わりしたんだろうな・・・>
しばしの間、目を閉じていたテリーはベッドからゆっくりと起き上がった。
ベッドの横に置かれた時計に目をやると、時間は午後4時になろうとしている。
テリーはほったらかしにしているロックの事を思った。
「静かな日々とも、しばらくお別れだな。」
そう呟くとテリーは使い古されたナップサック1個を持って部屋を後にした。
ロックはテリーからもらった帽子に向かい子供を叱る様に言った。
熱いフライパンに夕飯のハンバーガーの肉の塊が滑り込み、いい匂いを出していた。
しかし、1人分を作るのは張り合いが無いのか、一度火を弱めただけでフタをした。
シンクにもたれながらロックはボンヤリと自分で線を引いたカレンダーを見ていた。
「おい、肉が焦げてるぞ。」
その声で我に返ったロックは慌てて、火を止めフタを持ち上げた。
『うわぁ!』 熱くなったフタをロックはシンクの上に放り投げた。
『も、戻ってきたんだテリー。』
テリーはロックに歩み寄り、フライパンを覗き込んでこう言った。
「ところで、この焦げた肉が今夜のディナーかい?」
『ち、違う、これは・・・・・・これは失敗したんだ!」
ロックの困った表情をテリーは楽しんでいるようだ。
「ロック、KOFの招待状が届いた。お前も一緒に行くだろう?」
テリーの言葉にロックの表情は少し緩み、笑みがこぼれた。
<待ち合わせ場所は、お気に入りの雑貨ショップの前でしょ。それから・・・>
「お客様、空いてる器をお下げ致します。」
ウェイトレスの声で現実に引き戻された舞は、小さく頷いた。
『いけない、いけない。ボーっとしてたわ。私らしくもない。』
腕時計を見ると時刻は午後3時になろうとしていた。
「よし、このままアンディの道場へ行こう。
来週にはKOF出場の準備をしなければいけないから今日しかチャンスが無いわ。
問答無用でデートに連れ出してしまえばいいのよ!」
舞は、テーブルの上に置かれたレシートを手に席を立った。